天声人語

負け知らずだった日本陸軍が完膚無きまでに敗れた。それが1939年、ソ連軍と相まみえたノモハン事件である。悲劇は、半藤一利さんの手により「ノモハンの夏」のなかに凝縮されている。日本軍の火炎瓶などの手段ではどうにもならない最新鋭の戦車。圧倒的な戦力の差。敵を研究せず、勇ましいことばかり言っていた高級軍団たちを半藤さんは追及する。無計画。自己過信。優柔不断。それらは反省されることなく太平洋戦争が始まった。